久斗さんの話したいことって……?
もしかして忘れようとしていたあの件のこと?
昨日はたしかに、あんな状況だったからまともに話すことができなかった。
誠実そうな彼だから、こうしてちゃんと時間をとり、私の気持ちに応えてくれようとしてくれるのだろうか。
緊張と憂鬱な気持ちが混じりながら、彼と病院の廊下を歩く。
初めての恋で舞い上がって、久斗さんと結婚したいなんて言ってしまったけど、ひと晩病院のベッドで考え簡単に「はい、結婚しましょう」と言ってもらえるわけがないと冷静になった。
久斗さんと私は一度しか出会ったことがないばかりか、二時間程しか話したことがない。
私は今だってこんなに久斗さんにときめき、一目惚れしたと胸を張って言える。
けれど大人な彼が、こんなちんちくりんな私に恋するとは考え難い。ましてや結婚なんて。
入院病棟を出て、外来病棟のロビーへとやってくる。
この運び込まれた私立病院は、高級な雰囲気が漂っていた。
ロビーの天井は吹き抜けの造りで、観葉植物や花がいたるところに飾られている。
そして中央には高級そうなグランドピアノが配置され、清楚な洋服に身を包んだ女性が生演奏を奏でているのが見えた。
「昨日はろくに話せず申し訳なかった。君が俺と結婚したいという気持ちは本心からか?」



