カーテンの向こうで看護師さんの声が聞こえてきた。退院に関する書類を持って来てくれたようだ。
「ご苦労様です、ありがとうございま――……」
父に続いて顔を上げ、すぐに言葉を失った。
「謝罪に参りました。JAR航空の黒瀬と申します」
「うそ……っ」
看護師さんの横に立っていたのは、スーツを着た久斗さんだった。
「他の患者さんのところにも、順番に周っているみたいで」
看護師さんは遠慮がちに補足すると、テーブルの上に持ってきた書類を置き「また後で伺います」と言ってその場からいなくなった。
久斗さんは看護師さんの行方を目で追い、こちらに向き直る。
鋭い眼差しに捕らえられ、どきんっと鼓動が跳ねた。
まさか、久斗さんが来るなんて。
久斗さんは、昨日見た制服姿とは雰囲気が全然違った。
短い髪はスタイリング剤で七三にセットされ、露になっている美しい顔は表情が硬い。
全体的に厳粛な雰囲気が漂っており、その場がピリッと冷えた気がした。
「この度はご迷惑をおかけしまして大変申し訳ありませんでした」
「い、いえ……これは仕方がないことですし。娘もなんともありませんから」
深々と頭を下げる久斗さんに、必死で顔を上げるように父が伝える。
私も何か言わなくちゃと思うけれど、心臓の音が大きすぎて上手く呼吸ができない。
久斗さんと何を話したらいいのか分からない。



