エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む



***


飛行機事故から一夜明け、私は運び込まれた病院から早々に退院することになった。

「では、退院するにあたっての書類を持ってきますので、ここでしばしお待ちください」
「かしこまりました」

笑顔の看護師さんを父と一緒に見送る。
念のために一日、検査入院をしたけれど、骨折もしていなければ擦り傷ひとつしていなかった。本当にただ腰が抜けていただけだった。
機体に残っていた私物も、昨夜のうちにすべて航空会社によって返却され、今日の夜の便で、JAR航空に手配してもらった便で札幌に帰る予定だ。

「乱気流って恐ろしいんだなぁ、急にやってくるんだから」
「本当ね」

ベッドに腰かける私の前に、父は簡易椅子に座ってスマホを眺めている。
動画サイトで乱気流について取り扱ったニュースを見ているようだ。

そう――昨日、私たちが遭遇した飛行機事故の詳細は『晴天乱気流』、別名エアポケットと言われるものだったらしい。
昨晩、航空会社から謝罪の電話と共に詳細を聞いた。

山脈近辺で発生しやすい、異なった空気がぶつかる場所に飛行することで、機体がバランスを崩し激しい揺れが発生してしまうようだ。急激に風速や風向が変化し、晴天だと肉眼でもレーダーでも見つけることが難しく、予告なく起きた事故であったとのこと。乱気流だけでは墜落する危険は少なく、機内で起きた乗客の体調不良や怪我を考慮し、今回は羽田空港に緊急着陸したとのことだった。