エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

遠ざかっていく広い背中を見て、がくっと力が抜けた。
久斗さんに振られちゃったんだな、私……。
悲壮感で体が動かなくなっていく。
項垂れる私の肩を抱き、父が耳元で呼びかけてくれた。

「つむぎ、大丈夫か。とにかく今は体を休めることだけ考えるんだ、結婚のことはまた落ち着いたときに話そう」
「はい……」

父の声に、止まっていた時間が猛スピードで動き出す。
救急隊員に担架に乗せられた私はそのままやってきた救急車に運びこまれた。

久斗さん、驚いていたな。
いきなりあんなことを言われて、恥ずかしくて迷惑だったろうな……。

救急車の暗くて低い天井を見つめていたら、胸がすり傷をしたときみたいにズキズキと痛んできた。
ああ、失恋の痛さってこんな感じなんだ……と初めて思い知る。

夢見る乙女の、儚い初恋が散った。
久斗さんの最後に見た表情が脳裏に蘇りかけ、私は急いで目をつむる。
今は、何も考えたくない――。