エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

そこで母の姿は消え、視界が真っ黒になった。
薄暗い闇に浮かんできたのは、病院のベッドで横たわっている母だ。
生命力に満ち溢れていた母が、突然すい臓がんで倒れたのはケーキを一緒に食べた一年後くらいだった。
既に手遅れなほど進行していて、がんが発覚して三カ月後に呆気なく逝ってしまった。

『つむぎの幸せをずっと想ってる、パパ愛しているわ』

最期の言葉を言った母が、暗闇に飲まれていく。
命は……短く儚い。
絶対にとか永遠なんてない。前触れもなく別れがやってくる。
だから後悔がないように生きていこう。
母の姿を通して私はそう誓った、はずだったのに……。
いざ死を目の前にして、様々な後悔を抱いている。
私の人生、本当にこれでよかったのかしら?

『ダメに決まってるでしょ!』

え?
再び目の前に現れた母は、眉を顰めむくれ顔で腕を組んでいる。

『辛い思いをさせるために、私はアナタを産んだんじゃないわ! とっとと好きな人と結婚して、幸せになりなさーい!!』

ずいっと身を乗り出した母は私の肩を激しく揺さぶってきた。

『ちょ、ちょっとお母様!? わかったから!』

目が回り、徐々に意識が遠のいていく。
瞼の裏から白い光がこぼれ、とっても眩しい。
んん? ここはもしかして……天国?

「――……お客様! お客様!」