エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

各所で頭を下げ、憔悴しきったお父様にとても胸が痛んだ。
創業したひいお爺様、そして今日までホテルを守ってきたお爺様やお父様、そして裏で経営を支え亡くなった母、従業員として頑張ってくれる人のことを考えると、なんとかホテルは守りたい。

――私の結婚で皆が救えるなら。

本当にその一心で、彼との婚約を決めた。
そしてついに今日、お父様とともに東京に出向き、渉さんと業務的な手続きを交わし、最後にこうして彼と料亭の外で他愛のない話をして交流を深めているのだ。

「じゃ、また二週間後。婚姻届けとリングは用意しておくから楽しみにしてて」
「は、はい! よろしく、お願いします」

庭園を二周したところで、渉さんは急に私の腰を抱いた。
突然のことに対応できず体をよろめかせていると、ぐっと派手な顔が近づいてくる。

「その日は泊りになるんだ。夜の予定は空けとくんだぞ」
「!?」

驚く私の顎を掴み、さらに唇を寄せてくる。

「やっ……」

反射的に口元に力を入れ、抵抗したそのとき。

「あれ、もしかして八神社長ですか?」