エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


彼は八神渉さん、ダイエットシェイクを中心とした通販会社“八神net1”、若干三十歳の二代目社長。
惜しげもなく豪邸や華やかな交友関係も明かし、メディアでも大活躍中。
身長もそこそこ高く今どきの茶髪に目鼻立ちがはっきりした端正な顔だちで、女性人気も高い。

一方の私は、北海道で名の知れた老舗ホテルの社長令嬢。
自分で言ってはなんだけれど、渉さんとは真逆のような田舎娘。そして経営状況も、彼とは真逆だ。
社長であるお父様が十年ほど前に行ったホテルの大改装と、昨今の民泊やフィットネスジムなど新しい事業を始めたのが仇となり、廃業寸前。現在は元々あった札幌にあるホテル三軒のみ営業を続けている。

でも、これもいつまで続けられるか分からない。
そんな話を聞きつけた渉さんが、融資を名乗りでてくれたのが一カ月前。
とてもありがたかったけれど、融資の条件は渉さんと私の結婚が大前提だった。
何度かパーティで顔を合わせたことはあったけれど、苦手意識を持っていた私とは違って、彼は好意を持ってくれていたようで……。
正直気乗りはしなかったけれど、この不景気の中うちの古いホテルに手を差し伸べてくれる会社はほとんどないのが現実。

『いいのか、つむぎ』
『ええ。私には想っている方もおりませんし、ホテルがなくなってしまうのが、本当に嫌だから』