エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


別れ間際、冗談で彼女に問いてみた。しかしすぐに緊張している自分に気付く。
冗談で言ったはずなのに、俺はつむぎがイエスと言ってくれるのを待っていた。
それは彼女に惹かれ始めているからなのか、八神から守りたいからなのか……今だってよく分からない。
ただ、俺の問いに複雑な表情で黙り込む彼女を見て胸が苦しくなった。
彼女は生半可な気持ちで婚約を決めたわけではない。部外者の俺が軽々しく冗談でも言うべき言葉ではなかったのだ。

ひとりの女性を守ることは、簡単じゃない。
それはこれまでの経験上、痛いほど分かっているつもりだ。
だから本気で結婚を考えたとき、心から相手を守りたいと思ったときしか自分は動かない。
世間に対する体裁や評価のために必要とはいえ、一生の伴侶を家柄で決めるなんてとんでもない。
そこまで本気の気持ちを、俺は出会ったばかりのつむぎに持っているのだろうか?

――ピリリリ!ピリリリ!

ポケットに入れていたスマホの着信が鳴り、意識が引き戻される。
着信元を見ると、義理の妹の小春からだった。

『もしもし?』
『お兄ちゃん、今お家にいる?』