エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

つむぎに見送られ、俺はいつも通りタクシーで羽田空港に向かう。
今日は羽田空港から新千歳空港の往復だ。
つむぎたっての希望で、両方とも彼女は搭乗することになってくれている。
俺の最後のフライトで生まれ育った地に行けることが嬉しいと、彼女は泣いて伝えてくれた。

俺も同じく、最後にコックピットから見る景色が、彼女が愛する地だというのが嬉しかった。




その後。予定通り羽田から新千歳空港に到着し、羽田に戻る便の操縦桿を握った。
離陸体制に入る前に乗客に向け機長として最後のアナウンスを送るためにマイクのスイッチを上げる。

『――こんにちは、機長の黒瀬です。私事になりますが今日の便を持ちまして、私のラストフライトとなります。ご搭乗のお客様とこの便を飛行することができて、大変うれしく思います』

温かい拍手をみんなが送ってくれているのが、モニター越しに見えた。

多くの人命を乗せて安全に空に飛ぶには、航空学生のときから過酷な訓練や試験を乗り越えなくてはいけなかった。
夢が叶っても、乗務中にトラブルに巻き込まれ何度か寿命が縮る思いしてきた。

けれど不思議と今思い出されるのは、乗客がくれた温かい言葉や笑顔、そしてコックピットから見た壮大な美しい景色だけだ。


『Report ready?』
「Ready for departure」
『japanairroard 122 cleared for takeoff. good day』