エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


「久斗さん、いってらっしゃい。私もあとで追いかけますね」
「ああ、また。外は寒いから気をつけて」
「はい!」

いつも通り、フライト前の俺をつむぎは玄関まできて見送ってくれる。
華奢な腰を抱き寄せ、そっと彼女の額に淡いキスを落とす。
これが俺たちの〝しばしお別れの合図〟だ。

扉のドアノブに手をかけたそのとき。
着ていたコートが後ろに引っ張られ、自然と後ろを振り返った。

「……つむぎ?」
「今日まで長い間お疲れさまでした。パイロットとして日々頑張る久斗さんを、妻として誇りに思っていました」

つむぎはいつもの優しい笑顔で、ねぎらってくれる。
今の今まで、今日が最後のフライトになるという実感が湧かなかったのに、つむぎの温かい言葉を聞いたら急に胸が熱くなった。

「ありがとう。いつも通り、安全運航で頑張ってくるよ」
「はい」