エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

「それは……」

答えを聞くのが怖く、不安が胸にこみ上げて自然と涙が滲んだ。
久斗さんがその後に続く言葉を言ってくれないので、本当のことなんだと察する。

やっぱり、私のせいで辞めることは事実なんだわ。

久斗さんは私の瞳からこぼれた涙を指ですくいながら、顔を覗き込んできた。

「黙っていてごめんな。つむぎは優しいから自分の責任だと捉えてほしくなくて言えなかった」

「久斗さん……」

「たしかに八神とそういったやり取りがあったのは事実だ。でもそれは、朝宮ホテルとの融資を円滑に進めるためにも、八神が必要以上に俺たちに関わってこないためにも必要なことだった。それになにより、俺たちの大切な結婚生活を奪われたくなかった」

久斗さんは熟考してその答えを選んだのだ。
真摯な瞳に捉えられ、私は素直に彼の言葉を受け止めた。

「それにつむぎに出会う前から、今年中にパイロットを辞めることは決めていたんだ。少し時期が早まっただけで、悔しさはない。だからそんなに辛い顔をしないでくれ」

彼の清々しい顔を見てようやくホッとする。
小春さんの言葉だけを鵜呑みにして目の前が真っ暗になったけれど、久斗さんは私たちの結婚に対して前向きに考えてくれていたのだ。その温かい気持ちに、不安が取り除かれていく。

「つむぎと過ごす時間の幸せを知ってしまった。もう仕事しか見えてなかったあのときには戻れない」
「……っ!」

視線が自然と絡まり、時が止まる。
すると逞しい腕が伸びてきて、ぎゅっと力強く抱きしめられた。

「空にいる時間さえも惜しい。つむぎと過ごす時間を少しでも多く確保したいんだ」