エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

「話……?」

矢代さんは察したのか、私たちに会釈をして早々にその場からいなくなる。
重苦しい空気の中、私は久斗さんの手を自ら引いて一緒にマンションへと帰った。


「つむぎ? 様子が変だぞ。何かあったのか?」

久斗さんと隣り合ってソファに座る。

小春さんの話をすることはとても怖い。
久斗さんが悲しむ顔も見たくない。でも、先ほど矢代さんに言ってもらった言葉を胸に、私は思い切って彼と向き合った。

「今日、カフェに小春さんが来たんです。私に話しがあると……」
「小春が?」

不思議そうな顔の久斗さんに、こくりと頷く。

「私が乱気流の事故につけ込んで、久斗さんとの結婚を取り付けたという噂が立っていると。久斗さんが渉さんに多額のお金を払って私と結婚したことで、パイロットを辞めなくてはならなくなったことも教えてもらいました」
「何?」

私の言葉に彼はあきらかに顔をしかめた。
さらに言いずらい話をしなければならない。でもこの問題を超えて、私たちは〝本当の夫婦〟になれるはずだから――。

「前回小春さんとふたりきりで会ったときに暴言を吐かれました。今日もお店でそういうことがあって」
「……っ!」

衝撃を受け言葉を失う久斗さんを見て、胸がズキッと痛む。

「小春さんは、久斗さんと私の結婚を認めていません」