エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


小春さんはテーブルにお札を一枚置いて、店から出て行く。
久斗さんが隠していた事実に打ちのめされて動くことができない。
その場に座り続けている私のもとに、秋元さんがすぐに駆け寄ってきてくれた。

「ちょ、ちょっと……つむぎちゃん、大丈夫? とりあえずバックヤードで着替えてきな、お店のシャツもまだあるから」
「……ありがとうございます」


久斗さん、この数カ月ずっといっしょにいたのに、なんで言ってくれなかったんだろう。
パイロットの仕事を辞めるくらいなら、結婚の話をなしにしてくれてもよかったのに。
渉さんから守ってくれなくてよかったのに。
いっしょに住んだり、優しくしないでいいのに……。
私のこと、愛してくれなくてよかったのに……。

若くしてどれだけ大変なことを彼がしてきて、操縦桿を握っているか知っているからこそ、呼吸ができないくらい胸が苦しくなる。