小春さんの言葉に動きを止める。
何もかも初めて知る内容で、サッと血の気が引いた。
「どういうことですか? 多額のお金? パイロットを辞めるって……?」
「あなた、何も知らないの……? うちの資産からあなたのお金を出したのよ? お兄ちゃんはそれで責任をとって、経営に完全に入ることになったと」
「…………」
小春さんのあきれ果てた顔を見て、それが事実なのだと頭で理解する。
久斗さんの口から何も聞いていない。とても大事な話だ。私は……妻なのに。
夫の大切な職を奪っていたなんて、信じたくない。
涙腺が緩み俯いていると、思いきり水滴が顔にかかってきた。
「!?」
辺りがしーんと静まり返る。
ひと呼吸おいて、小春さんが飲んでいたアイスティーをかけられたことに気付いた。
「あなた、早く黒瀬家から出て行ってくれない? 目障りだわ。お兄ちゃんをこれ以上不幸にしないで」



