エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

「それは……乗っていましたが……」
「お兄ちゃんを(おど)したんでしょ? 優しさにつけ込んで結婚を迫ったんじゃないの?」
「そんなことっ……! するわけありません」

思わず声をあげてしまい、周りの注目を浴びてしまう。
私は、純粋な気持ちで久斗さんのことを好きになったのに。
久斗さんだって、私のことを初めから守りたいと言ってくれていた。
何も知らない小春さんにあることないこと言われて、胸が苦しくなる。

「だってあなたとお兄ちゃん、まだ出会って数カ月なんでしょ? あなたは飛行機事故のとき、八神渉さんと婚約していたわよね」
「なんで、それを……」

小春さんの口から渉さんの名前が出てきて、言葉を失う。
動揺する私の様子を見て、小春さんは楽しそうに声をあげて笑った。

「ホント顔に出るのね。渉さんから全部聞いたわ。飛行機事故の後に、あなたから急に婚約破棄されたって。朝宮ホテルがお兄ちゃんの弱みにつけ込んで金を支払わせたとしか考えられないと、八神さんはいろんな人に言いふらしているわ」
「そんなっ……!」

勝手な想像で作られた噂が尾ひれをつけて広がっているなんて、信じたくない。
一番にお父様の顔が浮かぶ。
札幌でひとり、久斗さんの会社と大きなプロジェクトを推し進めている最中だ。
業界でそんな噂が立ってしまったら、今まで以上に心身に疲労をきたすだろう。

目の前が真っ暗になり、思わず肩を落とす。
どうしたらいいの、誰に相談をすれば……。

すると小春さんはちっと舌打ちをする。

「お兄ちゃんもお兄ちゃんよ。乞食のようなあなたをうちの家にいれるために、八神さんに多額のお金を支払って、パイロットの職も捨てることになるなんて、本当にバカみたい」

え……?