けれど結局残りの時間は、お互いに結婚に関しての話題は一切しなかった。
私が甘いのが好きとか、黒瀬さんが辛いのが好きとか、
私の趣味はお菓子作りと読書で、ハマっている漫画があるとか……。
黒瀬さんは筋トレを一生懸命していて、今まで海外に住んでいる時間が長く、トリリンガルだとか。
そんな他愛のない話だった。
「――御馳走さまでした。とても美味しくて楽しかったです」
「それはよかった」
デザートたちを平らげ店を出た私たちは、ホテルのロビーで向かい合う。
私はこのままこのホテルに泊まる予定で、黒瀬さんは明日が仕事で早いらしく直帰の予定だそうだ。
夢の時間が終わる。
黒瀬さんとの過ごした二時間余りの時間は、私にとって刺激的だった。
ときめいたり、胸が熱くなったり、悲しくなったり。
今まで知らなかった感情を、たくさん知れた気がする。
名残惜しく、なかなかお別れの挨拶が言えないでいると、黙っていた黒瀬さんが口を開いた。
「俺と代わりに結婚するか? つむぎ」
「えっ」
黒瀬さんは微笑んでいたけれど、声色は真剣だった。
本気なのかウソなのか、どっちなのか分からない。どこかこの状況を楽しんでいるようにも見える。
「そ、れは……」
『できません』。
そうはっきりとは言い切れない自分が、恥ずかしかった。
渉さんではなく、黒瀬さんと一緒にいられたら?
不謹慎な問いを自らの心に投げかければ、心臓がドクドクと早鐘を打つ。
何故、こんなに黒瀬さんの突拍子のない言葉を鵜呑みにしているの。私……。
「……困らせて悪かった。八神さんに何かされたらここに連絡をくれるか」
「え?」
彼はそう言葉を切ると、バックから取り出した名刺入れから、一枚私に差し出した。
「いつでも君を助けに行く」
私が甘いのが好きとか、黒瀬さんが辛いのが好きとか、
私の趣味はお菓子作りと読書で、ハマっている漫画があるとか……。
黒瀬さんは筋トレを一生懸命していて、今まで海外に住んでいる時間が長く、トリリンガルだとか。
そんな他愛のない話だった。
「――御馳走さまでした。とても美味しくて楽しかったです」
「それはよかった」
デザートたちを平らげ店を出た私たちは、ホテルのロビーで向かい合う。
私はこのままこのホテルに泊まる予定で、黒瀬さんは明日が仕事で早いらしく直帰の予定だそうだ。
夢の時間が終わる。
黒瀬さんとの過ごした二時間余りの時間は、私にとって刺激的だった。
ときめいたり、胸が熱くなったり、悲しくなったり。
今まで知らなかった感情を、たくさん知れた気がする。
名残惜しく、なかなかお別れの挨拶が言えないでいると、黙っていた黒瀬さんが口を開いた。
「俺と代わりに結婚するか? つむぎ」
「えっ」
黒瀬さんは微笑んでいたけれど、声色は真剣だった。
本気なのかウソなのか、どっちなのか分からない。どこかこの状況を楽しんでいるようにも見える。
「そ、れは……」
『できません』。
そうはっきりとは言い切れない自分が、恥ずかしかった。
渉さんではなく、黒瀬さんと一緒にいられたら?
不謹慎な問いを自らの心に投げかければ、心臓がドクドクと早鐘を打つ。
何故、こんなに黒瀬さんの突拍子のない言葉を鵜呑みにしているの。私……。
「……困らせて悪かった。八神さんに何かされたらここに連絡をくれるか」
「え?」
彼はそう言葉を切ると、バックから取り出した名刺入れから、一枚私に差し出した。
「いつでも君を助けに行く」



