エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む



その〝練習〟の意味が分かったのは、その日の晩――。
私たちはいつも通り夫婦の寝室にいて、隣同士ベッドに入っていた。

「久斗さん、おやすみなさい」
「おやすみ、つむぎ」

久斗さんは上体を起こし、私を顔の横に手をつく。
こちらを見下ろす彼は微笑んでいてどこか楽し気だ。

「ひ、久斗さん?」

不思議に思う私に淡いキスが降ってくる。
いつものように彼が離れていくのを待つけれど、さらにもう一度重ねられた。

あ、あれれ……?

普段と違う動きに驚いていると、久斗さんはキスの合間に「練習だよ」と告げてくる。
納得して身を固くしていると、角度を変えた久斗さんにつられ、わずかに唇を開いた。

「んっ……!」

舌が、入ってる……!?

三回目のキスは舌が差し込まれた。
驚く私を楽しむように柔らかい舌が優しく舌をからめとってくる。

「角度を変えたときに、息を吸って。そう、上手だ」
「ん……」

久斗さんに褒められほっとしていたけれど、今度は手のひらに彼の長い指が重ねられしっかりと捕らえられた。
キスが深まり、より濃厚に舌と舌とが重なる。
感じたことのない浮遊感が怖くなり、自然と視界が滲んできた。

「これ以上はやめておくよ、止められなくなりそうだから」