エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


「つむぎ、お疲れ様」
「ひ、久斗さん……!」

目の前に立っているのは紛れもなくパイロットの服装をした、旦那様だ。
その隣には目鼻立ちがはっきりとした、背の高い綺麗なCAさんがにこやかに笑っている。
突然の登場に動揺していると、ふっと久斗さんが笑みを浮かべた。

「今日はもうあがりなんだ。同僚といっしょにつむぎの視察に来たよ」
「そ、そんな……! さっきメッセージくれたときに言ってくれればよかったのに」

久斗さんは私がバイトに慣れるまでは来るのを遠慮してくれていたので、この来店が初めてなのだ。
言いたいことは山ほどあるが、とりあえずふたりを席へ案内する。
お水を用意するためにキッチンの前までやってくると、秋元さんが焦った表情で顔を出した。

「ちょちょっと、つむぎちゃん! あのパイロットってJAR航空の人だよね? お知り合い?」
「お知り合いというか……主人です」
「あっ!」

黒瀬と黒瀬が点で繋がったらしく、秋元さんは驚愕している。彼は羽田では相当な有名人のようだ。
矢代さんも矢代さんで他の接客をしながら、黒瀬さんとCAさんのことが気になるようでチラチラと見ていた。
傍から見たらあのふたりが美男美女のカップルとして目に映っていることだろう。
緊張と複雑な気持ちで久斗さんたちにお水を持っていく。

「ご来店ありがとうございます。久斗さんの妻のつむぎです」