エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


昼食を食べ、矢代さんの誕生日に何を作ろうかスマホで検索しながら考えていると、一件のメッセージを受信した。
差出人の名前を見た瞬間、胸が高鳴り出す。

【お疲れ様。今日のバイトは何時上がりだっけ?】

十七時に退勤すると伝えると、彼から【了解。今日は早上がりだし、外で食べるか?】とくる。
彼は朝から国内線のフライトだったはずだ。
久斗さんと外食できるなんて、いつぶりだろう。
バイトが終わったらすぐにシャワーに入って、おしゃれをしなくちゃと心に誓う。

あれから一時間後の十五時――。
午後のオープンが始まった。
この時間帯は一般のお客さんに交じって仕事終わりの航空関係者の人の途中休憩にも使われやすい。

CAらしき女性ふたりと、カップルを案内し、食事を提供してからしばしゆったりとした時間が進む。

「……矢代さんって、甘い物だと何が好きなんですか?」
「え? なんだよ急に」

店内の様子を確認しながら、いっしょに食器を拭いている矢代さんにそれとなく尋ねる。
彼は不振感を露にした顔で眉を顰めたが「チョコブラウニーとロールケーキ」と教えてくれた。

「ロールケーキ……! あ、あそこ……銀座の『シェ・ハギモト』のご存じですか?」
「知ってるも何も東京じゃロールケーキの名店だ。この前も夏季限定のカシスソース入りを食ったところだし」
「そうなんですか!?」

気になっていたお店だったので、つい食いついてしまう。
矢代さんも言葉少なに、お店の雰囲気などを教えてくれた。

「店が家から割と近いし、そんなに食いたいなら今度差し入れで持ってきてやってもいいぞ」
「ほんとですか」

矢代さんの優しさに驚きつつも喜んでいると、来客を知らせるベルとともにお店の扉が開いた。

「いらっしゃいま……え!?」