エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


ふわふわのスポンジも、果汁が効いたジュレも、みずみずしいメロンの果肉もぜんぶ甘くておいしい。
でももっと甘いのは、黒瀬さんの言葉だ。
さっき出会ったばかりなのに、なんで私のことをこんなに理解できるのかしら?
なんで私の言って欲しいことを言ってくれるの?
黒瀬さんは私のことを思って、結婚しない方がいいと言ってくれた。
本当はとても嬉しかった。
それに渉さんと結婚したら、きっとスイーツは作れないと諦めかけていたけれど、黒瀬さんに言われて絶対に作り続けようと思えた。

「ぐすっ……おいひいです。甘くて」
「つむぎ?」

お皿に向けた視線を上げることができない。
こんな人目のあるところで、泣くなんて本当にみっともない。
でも、黒瀬さんの優しい空気に包まれたら涙があふれてくる。

「すまない、俺があんなことを言ったから。つむぎは大丈夫だ」
「すみません……違……」

理由を伝えたいけれど、涙が溢れて上手く言葉がでない。
黒瀬さんは席を立ち、私の横に腰を下ろすとハンカチで涙を拭ってくれた。
羞恥を堪え顔を少しだけ上げると、彼の優しい瞳と視線が絡む。

「俺も家の事情で結婚を強いられている身だから君の気持ちが痛いほど分かるんだ。だから余計なことを言ってしまった。ごめんな」
「黒瀬さん……」
「つむぎの幸せを願っている」