エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む



***


久斗さんと同居を始めてから、今日で一カ月。
そしてmineをカフェでアルバイトを始めてから、まるまる二週間が経った。

「ひゃあ!」
「きゃっ! お客様申し訳ありません……!」

お店では今日も、お客様の悲鳴と私の謝罪が飛び交う。
来店してくれたばかりの中年の女性に向けてお水を盛大にこぼしてしまい、大急ぎでテーブルを拭こうとベックヤードに戻りかけたそのとき。
つるっと足が滑り、体が後ろに倒れていく。

「わわわわ!」

しかしすかさず腕を掴まれて、なんとか転ばずに済んだ。

「気をつけろ」

耳元で聞こえてきた声にハッとして振り返ると、矢代さんがお客様に微笑みかけながら、私に向けて雑巾とモップを渡してくれる。

「田中さま申し訳ありませんでした。お洋服にはかかっていないですか?」
「ええ、矢代くん大丈夫。こちらのお姉さんは新人さんかしら?」
「はい、先々週入って来たばかりで……ご迷惑をおかけしてすみません」