つむぎを送り届けた後、残っている仕事を思い出し会社に寄ることにした。
しばらくデスクワークをしていると、父から連絡がきた。
「もしもし?」
『――久斗、今時間はあるか? 小春のことで少し』
「どうした?」
普段は仕事以外の話はしないうえに、父の真面目な声のトーンに妙な胸騒ぎを覚えた。
『いや、昨日小春と電話で話していたときに八神渉と仕事を始めたと言っていてね、少し心配になったんだよ』
「八神と……?」
父の話では、小春が勤めている広告代理店と八神渉が展開している〝八神net1〟が大規模な広告を打ち出す準備を始めているらしく、プロジェクトの担当のひとりとして小春が配属されたようなのだ。
八神渉とも会食や打ち合わせを行っており、親交を深め始めていることを父は心配していた。
『なんせ信用できない男だから……父親として、必要以上に関わるなと言っておいた。それに何より、つむぎさんのことがあるだろう』
「ああ、そうだな」
小春にはほとんど詳細を伝えていないのだ。
八神がつむぎの元婚約者だったことや、大金を支払い婚約破棄をして俺が彼女と結婚したことなど、隠していることはいくらでもある。
それは小春にこのいざこざに巻き込まれて欲しくないという気持ちと、つむぎの印象が悪くなることを懸念してだった。
つむぎと小春は既に打ち解けて、いっしょに食事に行っているくらい仲がいいのだ。八神にはそっとしといてもらいたい。
「俺からも、小春に必要以上に八神と関わるなと伝えておく」



