「場所を変えてやるから、足開く前にちゃんと洗ってこいよ」

微笑んでいた女の顔から表情がなくなった。


「足? 開く?」

「女の方から慰めてあげるなんて言うのは、そういうことだろ?
 たださ、あんた臭うから、その前に洗ってきてよ。
 こっちは目を瞑って、鼻をつまんで突っ込むけど、最低限洗ってもらわないと」

「……」

「僕はあんたに触りたくないから、痛い目に合わないように、洗うついでに自分で解してこいよ」


女は屈辱で顔を赤く染めていた。
その声は怒りで震えている。


「こっちが下手に出ていたら……
 お前みたいな半端なツンデレルート、あたしは1回だって選んじゃいなかったのにっ!
 お前を攻略した後には、シャルルって、隠しキャラがいるから、って……ただそれだけの存在の癖に!」


半端なツンデレなんて言うのもよくわからないし。
その、……の癖に、って言う罵りは何度も子爵夫人から聞かされたからなぁ。
ぶつけられても、僕には全然響かないや。



バカ女が僕に背を向けて去って行く。
何も病気は持ってないのか、とか。
おかしいのは頭だけか、とか。


まだまだ言ってやりたいことはあったのにな。
これで終わりか。
呆気ないな、つまんないな。


馴れ馴れしく僕の名前を呼ぶバカ女に何を突っ込んでやろうか、と連れ込んだ実験室の備品を頭に思い浮かべていたのに……