私の名前はアンドレ・マルタン・シャンドレイ。
実家は大して広くないシャンドレイ伯領を治めるマルタン家の四男。

上には男が3人も居て、どうなっても私に家督が回ってくる可能性は皆無だったので、シャンドレイの中等学校を卒業する前に王都に出て、騎士団試験を受けた。

王都の騎士団と言えば、学院の高等部騎士科を卒業してから試験を受けて入団してくる中位貴族の次男三男が多いので、同い年のそいつらよりも早く入るべきだと思ったからだ。

それが何故か騎士団の訓練を見学に来ていた王妃陛下に気に入られて、私は既に15歳だったのに、中等部へ入学する13歳の第1王子殿下の同級生として入学させられてしまった。

同級生なのに護衛。
護衛なのに同級生。

これはリシャール殿下のご希望に因るものだ。
学院で王家の影を付けるのも嫌、大人の護衛騎士を連れて歩くのも嫌、そんな我が儘、いやご希望で俺が抜擢されたのだ。