「あんた、旅行の時にいた医大を目指してるって言ってた人だな。あんたも公安の人間だったのか。あの時北海道にいたのは、ただの旅行じゃなくて何かの捜査だったわけか」

モニカに呆れたように言われ、指摘された十はどこか恥ずかしそうに目をゆっくりと逸らす。十は顔だけでなく耳まで赤くなっていた。その様子を桜士が見ていると、ハンカチが差し出される。ハンカチをくれたのはアルフレッドだった。

「本田先生。あ〜、九条さんだっけ?ヨハンが言いたいことがあるらしいから、聞いてあげてくれない?」

桜士がヨハンの方に目を向ければ、彼はまるで鬼のような形相でこちらを睨んでいた。大きな足跡を立てながらヨハンはこちらに近付き、口を大きく開け、言葉が発せられる。

「いいか?九条桜士、よく聞け!俺はお前のことが大ッ嫌いだ!全体的に胡散臭くて、一花の周りをウロチョロして、看護師や患者からチヤホヤされて、医者としての技術があって、本当にお前のことなんて嫌いだからな!一花がお前のことが好きでも、俺は大嫌いだからな!」