桜士はそう返し、十の手から紙を取り返そうとする。だが、それを十は必死で阻止するため、桜士は苛立ちが募っていった。

「おい、さっきから何でそんな邪魔ばかりするんだ!」

桜士が怒鳴り付けると十は一瞬肩をびくりと震わせる。だが、その目は桜士を迷うことなく睨み付けるように見ていた。

「今の九条さんは、いつもの冷静な九条さんじゃないです!九条さん、すごく焦ってるじゃないですか!そんな状態でいくら考えたって解けるわけないでしょう!?」

「焦る!?当然だろ!!こうしている間にも、四月一日先生が危険な目に遭っているんだ!!」

桜士は十の胸ぐらを掴み、彼を揺さぶる。今にも桜士は十を殴りかからんばかりの勢いのため、周りにいた捜査官たちが騒つき、「九条さん!灰原!」と止めに入る。

桜士の指先は震えていた。その頭の中には一花のことがある。あの笑顔が奪われてしまったら、そう思うだけで桜士はうまく息ができなくなり、寒気が体に走っていく。