「……ねぇ結衣、あたしちょっと阿辺ぶっ飛ばしてくるね!」

「えっ!? い、いいよそんな事っ……!」

「大丈夫、騒ぎにならない程度にするからさ。」

「そういう問題じゃないよっ!」

 阿辺君に嘘の告白をされた事や、私を助けてくれた秦斗君と仮に付き合うようになった事。

 それらを全て話し終えたと同時に、紗代ちゃんは腕まくりをして拳を作った。

 紗代ちゃんは人一倍正義感が強い。

 そして、その紗代ちゃんの気持ちはありがたい。

 でも、紗代ちゃんがそのせいで傷つくのは見たくないっ……!

「私は大丈夫だから。紗代ちゃんの気持ちは嬉しいし、すっごくありがたいけど……そこまでしなくても、私は平気だから。」

「……まぁ、氷堂が居るから大丈夫か。」

 紗代ちゃんを安心させたくて笑顔を浮かべて、念を押すように言う。

 すると私の言葉に紗代ちゃんは意味深そうに、小さくそう呟いた。

 ……私は、紗代ちゃんの言葉に思わず心の中で同意した。

 秦斗君のことは何も知らない。知っている事なんて、ほんのちょっとだけ。