極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 ふるふると首を振って、ドキドキしている自分と心を戒める。

 ……名前呼び、か。

 女の子でも私のことを名前で呼んでくれるのは、紗代ちゃんだけ。

 人間関係に良い思い出はないから、少しだけ返事を躊躇う。

 だけどきっと、大丈夫な気がした。

 それは氷堂君だからなのかどうなのかは、今はよく分かっていない。

 ……氷堂君は悪い人じゃ、ないから。

 きっと、大丈夫だ。

「うん、分かったっ。改めてよろしくね、秦斗君っ!」

「っ……こちらこそよろしくね、結衣さん。」

 ん? やっぱり秦斗君、体調悪いんじゃ……。

 またもや顔を赤く染めてしまった秦斗君に、不安が積もる。

「ゆ、結衣さんそろそろ学校見えてきたよ。」

 でもあからさまに話を逸らそうとしていたから、私は何も言えなかった。



 うん……思ってた通りだっ……。

 私は今、とても肩身の狭い思いをしている。

 分かっていた事だったけど……まさか、ここまで注目されちゃうなんて……。

「昨日聞いたんだけど、氷堂と湖宮さん付き合いだしたんだって……!」