極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 指の隙間から見える氷堂君の肌は……すぐ分かるくらい、真っ赤。

 氷堂君、どうしたんだろう……。

 顔も赤い気がするし、体調崩しちゃってるのかも……。

 でも私がそうやって悩んでいる間に、氷堂君は手を口元から離した。

 そして代わりというように、こんな言葉を口にする。

「湖宮さんは、俺以外の男子から名前呼びされた事ないってさっき教えてくれたよね?」

「う、うん……そ、そうだよ?」

「それならこれからは、結衣さん……って呼んでもいい?」

「はへっ……?」

 突然のお願いに、素っ頓狂な声が口から零れた。

 そして氷堂君は心配そうに、今度はこう付け加える。

「だから、俺のことも下の名前で呼んでほしいな。」

 儚げな表情で伝えてくる氷堂君。

 そんな彼に私は思わず、息を呑んだ。

 ……心臓がすごく、脈打っているんだ。

 ドキドキってうるさく、下手すれば氷堂君に聞こえちゃうかもしれないくらい。

 ……って、そうじゃなくて。

 ちゃんと考えなきゃ、氷堂君のお願いを。