極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 そうすると氷堂君はほんのちょっとだけ、意地悪な笑みを浮かべた。

「うん。むしろこうやってしたほうが、都合がいいんだ。敵を欺くからにはまず味方からって言うくらいだし、お兄さんには悪いけど、今は信じてもらっていたほうがいい。」

「な、なるほど……。」

 確かに、それはそうかもしれない。

 何となく納得できて、うんうんと頷く。

 だけど今度は、別の問題が出てきた。

「さっき氷堂君、私のこと名前で呼んでくれた、よね……。」

「……っ、本当にごめん。つい恋人らしさを出すには、名前呼びのほうが自然かなって思って……でも、湖宮さんの気持ちも聞かずに……」

「あっ、謝らないでっ。」

 別に、謝ってほしいわけじゃない。

 むしろ感謝を伝えたいんだ。

 氷堂君に謎の誤解を与えない内に、口早に自分の気持ちを言葉にする。

「私、男の子から名前呼びされた事なくって……実は嬉しかったんだ。むしろありがとうだよ、氷堂君っ。」

 素直にそう伝えると、氷堂君は何故か空いているほうの手で口元を隠した。