極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 ……けど、言う勇気が出ない。

 私は臆病だ。これくらいの事もできないなんて。

 お兄ちゃん、本当にごめんなさい。

 心の中でもう一度、お兄ちゃんに謝る。

 その時、目の前から爽やかな声が聞こえた。

「湖宮さんおはよう。」

「あっ……氷堂君おはようっ。遅かったよね、ごめんね……。」

「ううん、全然大丈夫だよ。……そちらの方は?」

 朝から王子様オーラを振りまきそうなくらい爽やかな氷堂君にそう尋ねられ、一瞬だけ肩を揺らす。

 でもすぐに立て直して、お兄ちゃんを紹介した。

「私の兄だよ。ここまで送ってくれたんだ。」

「あ、そうだったんだね。お兄さんもおはようございます。」

 氷堂君はそう言って、小さく会釈をする。

 だけど何故か、お兄ちゃんには何も返さず小さく呟いた。

「……って呼ぶな。」

「え?」

「お兄さんって、お前は呼ぶな……っ!」

 ……え?

 お兄ちゃんが急に声を荒げ、驚いて何も言えなくなる。

 ど、どうしたのお兄ちゃん……?

 お兄ちゃんはちょっとやそっとの事じゃ怒らないくらい、寛大な心を持っている。