極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 ――俺はもうすでに、湖宮さんを好きになってるんだから。

 好きな人を怒るわけない。そもそも怒る事でもないし。

 そしてお礼を言えば、湖宮さんはふわっと微笑みを返してくれた。

「えへへっ、こっちこそありがとうっ。」

 おそらく……というか絶対、俺はこの瞬間で完全に湖宮さんに落ちた。

 可愛い、愛おしい。

 そんな感情たちが溢れてやまない。

 それと同時に、庇護欲と過保護が加わって守りたくなる。

 ……そう、決めたのに。

「お前みたいな地味女、最初から興味ないっつーの。」

「……俺だってさ、お前みたいな陰キャに告白したくなかったよ。」

 俺は好きな人を、守れないくらい弱い存在だった。

 その事件が起きた時、俺はたまたま担任に呼び出されて帰るのがいつもより少し遅くなってしまった。

 急いで帰ろうと、速足で移動していた時にその声が聞こえたんだ。

 揉め事……?と不思議に思い、顔だけ覗かせたとほぼ同時。

 ……俺の視界には、今にも泣きだしてしまいそうに微かに震えている湖宮さんが映った。