極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 それが表に出ていたのかは分からないけど、湖宮さんは終始心配そうに表情を曇らせていた。

「あっ……氷堂君、勝手な事しちゃって、ごめんなさいっ……! 余計なお世話、だったよね……。」

 あらかたの処置が終わったのか、顔を上げて慌てたように口走る湖宮さん。

 っ……!?

 その瞬間に心臓がぎゅっと、揺さぶられたような感覚が俺を襲った。

 ……けど、それ以前に。

「謝らないで。ありがとう、湖宮さん。とっても嬉しい。」

「へ……?」

 何で湖宮さんのほうが謝るのかが、俺には分からないんだけど。

 嬉しい。その言葉に嘘はない。

 処置を施してくれた事もそうだけど、それ以上のもう一つの理由があった。

 ……俺と対等に話してくれた事。

 俺に話しかけてくる時、周りはいつもどこか遠慮している。

 それがとてつもなく、嫌だった。

 どこか一線を引いているような、一歩足を下げているような。

 踏み込まれるのは好きじゃないけど、踏み込まれなさ過ぎて“完全な他人”と思われる事が嫌だった。