極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 湖宮さんは一瞬驚いたように肩を揺らしたけど、すぐに微笑んで返してくれる。

「そっか。ありがとう。」

 ……あぁ、ダメだ。

 ――可愛すぎるんだけど。

 何に対して俺はありがとうと言ったのか、自分でも理解はできていない。

 いや、それ以前に……“可愛い”って、何ですぐ出てきたんだろう。

 湖宮さんのふわっとした、まるで花が咲き誇るような笑顔に心臓が鷲掴みにされる感覚に陥った。

 息が上手にできなくて、でもそれが心地よいと不思議な気持ちになって。

 だけどそのすぐ後、心臓が止まりかけるような出来事が発生した。

「わっ!」

 ……っ、危ないっ……!

「湖宮さんっ……!」

 何かにつまづいてしまったのか、湖宮さんの体が倒れる。

 こういう場面に出くわした時、俺はいつもなら手だけを差し出すはず。

 自分の巻き込まれるのはあまり好きじゃない。面倒事には関わらない。

 なのにその時だけは……自分なんかどうでもいいと、本気で思った。

 無意識なのか、意識的なのかは曖昧だった。