極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

「あんな風に笑う氷堂君、あたし初めて見たんだけど……!」

 え? 俺、笑ってた……?

 周りからのそんな声で俺はやっと、自分が自然と笑っている事に気付いた。

 ……初めてだった。

 いつも意識して口角を上げて、偽りの笑顔を作って。

 誰からの受けもいい表情を頑張って作っていたはず、なのに……。

 ……戸惑いを、隠せない。

 意図的ではなく無意識に緩んだ頬はなかなか戻らなくて、俺は淡くも自分の心を理解した。

 もしかして俺は、湖宮さんのことを……なんて。



 その日の体育の時間、俺に衝撃的だけれど必然的な出来事が起こった。

 体育が無事終わり、まだ片付け切れていなかった体育用具を倉庫まで運び入れる。

 すぐに出よう、こんなむさ苦しいところ。

 ……でもすぐには出られない状態が、直後俺に降りかかった。

「あれ、湖宮さんどうしたの?」

「……さ、サッカーボール片付けに来たんだ。片付けきれてなかったらしくて……。」

 気付けば、というかほとんど無意識に声をかけていた。