極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

『いえっ。氷堂君のお役に立てたのなら良かったですっ。』

 ……普通なら、お礼をせがむところなのに。

 そう思う俺が変なのか、それとも湖宮さんが謙遜しているのか。

 本気で考えてしまうくらいには、彼女がとても純粋なのだと分かった。

 そしてその出来事から一か月以上経っても、色褪せる事なく脳裏に残り続けている。

 ……それともう一つ、驚いてしまう自分の変化があった。

「氷堂君おはよう~!」

「今日もめちゃくちゃかっこいいね……! やっぱリアル王子……!」

「朝から見られるなんてラッキー!」

 朝から騒がれるのは、生憎好きじゃない。

 けれど顔に出すわけにもいかず、いつも通りに登校する。

 その時、ふと校舎を見上げた。

 あ……湖宮さんだ。

 大きな眼鏡をかけているのはこの学校で湖宮さんだけだから、すぐに分かった。

 それだけ。本当に、ただ湖宮さんを確認しただけなのに。

「……え、めっちゃ微笑んでる! 氷堂君がめっちゃ微笑んでる!」

「ていうか、いつもよりほっぺたゆるゆるじゃない……!?」