極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 というか普通、こういう面倒なものは避けたがる特性が人にはある。

 俺だって本当はそう。面倒な関わりや物事は避けて生きている。

 でも彼女は自分から、負担を抱えていこうとしていた。

 ……きっとこの時の俺は、もうすでに彼女に興味を持っていたに違いない。

『うん。お願いしようかな。』

『それじゃあ……これ、持っていくの手伝います!』

 えぇ、そんなに?

 彼女が抱えたのは、俺と同じくらいかほんの少しだけ少ない資料量。

 これ、結構な重さがあるはずなのに……凄いな、彼女は。

『ありがとう。』

 だけど彼女の気遣いを無下にするわけにはいかずに、俺は笑顔を浮かべた。

 ……でもその時の笑顔は、いつもよりも自然と浮かんだ気がする。



 あの日以来、俺の頭の中は彼女……湖宮さんのことを考える事が断然増えた。

 正直、自分が一番驚いている。

 他人になんか今まで興味を示さなかったのに、ここまで考えてしまう事に。

 資料を持って行った後、湖宮さんはすぐに立ち去った。

『本当にありがとう。助かったよ。』