極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

『え?』

 そこまで考えた時、おもむろに背後から声をかけられた。

 そのまま反射的に振り返ると、俺の視界には真面目そうな女子が映った。

 大きな眼鏡をかけていて、一般的に地味と言われそうな子。

 俺に何の用……?と、不審に思わずにはいられない。

 とりあえず尋ねてみよう。何で俺の名前を呼んだのか。

 俺の名前を知っているのは分かる。俺は噂の種になりやすいから。

 この学校でも“王子”なんて、俺に不釣り合いな二つ名が勝手についていたくらいには。

 これのどこが王子様なんだろう。中身はこんなにも真っ黒なのに。

 何とか見放されないように必死になっている、どうしようもない男なのに。

『どうしたの?』

『その資料……一人で持っていくんですかっ?』

『ん? そうだけど……。』

 何を言われるかと少し身構えたけど、聞こえたのは控えめそうに尋ねてくる声。

 遠慮がちなその声に思わず拍子抜けしてしまう。

 正直彼女には悪いけど、もっとグイグイ来る系かと思っていたから。

 俺に話しかけてくる子は、そんな子が多かったから余計に。