『秦斗君は成績優秀だし、運動神経もいいし何でもできるから将来は有望だわ~。』

『あんなに天才な子は今までいなかった。これからが楽しみだ。』

『……秦斗は優しいから、きっと素敵な人になれるわ。』

 幼い頃からの期待、それは何よりも俺の足を引っ張っていた。

 俺は優しくない。本当は優しくするのも、難しくてやめてしまいたいんだ。

 でも、優しいほうがこの世は有利に生きる事ができると知っている。

 だからだろうな。俺が無理やり愛想よく振る舞っていても、誰も何も言わない。

 ……俺が“いつでも優しい”と、レッテルを貼られているみたいに。

 それが昔からの俺の悩みだった。

 誰も俺自身を見てくれやしない。見ているのは才能と利益、将来性で使えるかどうか。

 親戚や教師、親でさえも……俺自身をあまり見てはくれなかった。

 バレていないとでも思っているのだろうか。いつも俺が笑ってるから、何を思っていてもいいと思っているのか。

 それは知らないけど、俺はうんざりしていた。

 ……どうして俺の本質を見てくれないのか、と悩んでいた。