「それじゃあ俺たちは表向きは恋人だけど、友達って関係なんだよね。」

「うん……曖昧な関係にしちゃって、ごめんなさい。」

 申し訳なさや罪悪感は、そう簡単に拭えないけど。

 だって結果的に私は、氷堂君を利用してるって事なんだもん。そんなの、許される事じゃない。

 そんな意味も込めて謝ると、逆に申し訳なさそうな声が聞こえた。

「いや、ほとんど俺のわがままのようなものだし。それにすぐ気付けてたら、湖宮さんが傷つく事もなかった。俺のほうこそごめんね。」

「……やっぱり優しいね、氷堂君は。」

 氷堂君は巻き込まれた側なのに、謝罪をしてくるなんて。

 それに対しても罪悪感が湧いてきたけど、ここで謝ったってきっと謝罪ループに入ってしまう。

 ……本当にごめんね。ありがとう、氷堂君。

 口には出さず、心の中でそう伝える。

「……俺が優しくするのは、湖宮さんにだけなのに。」

 ほわほわとした気持ちに包まれていたからなのか。はたまた奇妙な関係が始まる事に少し緊張をしていたからなのか。

 それは分からないけど、ぽつりと零した氷堂君の独り言に私は気付かなかった。