極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

「可愛い、か……。」

 ぽつりと、氷堂君が何かを呟く。

 でも私には聞こえなくて、一人首を傾げる。

 氷堂君、何か言った……?

「……湖宮さん。」

「は、はいっ!」

 気になってしまったから尋ねようとしてみるも、阻止されるように名前を呼ばれる。

 反射的に返事をすると、氷堂君はさっきの慌てていた表情から一変。

 真剣な表情に変わっていたから、私も神妙な面持ちになってしまう。

「本当に俺と、友達として近くに居てくれる?」

 ……え?

 私の中に、疑問が生まれる。

 氷堂君はきっと、私の「恋人にはなれないけど、友達としてなら」発言の話をしているのだろう。

 ……その中に違和感を覚えたのは、氷堂君の口ぶり。

 “居てくれる?”

 まるで、懇願するような言い方。

 まるで、誰も氷堂君の近くに居てくれないような言い方。

 その言い方が引っかかって、すぐには返事ができなかった。

 けどすぐに飲み込んで、ゆっくり頷く。

「うん。だってもう私は、”氷堂君の恋人”として認識を持たれてしまう。でも本当に恋人になる事は、私はできない。」