極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 氷堂君との関わりはないに等しいし、付き合ったとしても氷堂君ファンの人たちからの制裁が怖い。

 だから断るのが最善なんだ。

 申し訳なさと罪悪感を抱きながらも、ちゃんと言葉に出す。

 これで氷堂君も引いてくれたら……。

「……ごめんね。確かに俺もこんな状況で言う事ではなかったね。」

「それなら、もう私には――」

「それでも俺は、湖宮さんを諦めたくない。」

 え……諦めたくない、って……。

「氷堂君が私のことを考えてくれたのは分かってるよっ。でも、そこまでしなくても……」

「ううん。俺はしたい。それにどっちにしろ、明日には噂が広まっちゃうと思うし。」

「噂……?」

 それは、どういう意味……?

 突拍子もなく言われた単語に首を傾げると、氷堂君は少しだけ困ったように微笑んだ。

「うん、噂。さっき俺は湖宮さんの気持ちを無視したまま、『貰っていい?』なんて言っちゃったし、ムードメーカの彼は話を広めるのが上手だからね。きっと明日の朝にはもう、“俺たちが付き合ってる”っていう話が出回るはずなんだ。」