「……氷堂君、助けてくれてありがとう。」

 でもまずは、お礼を言わなくちゃ。

 氷堂君があの場から救ってくれなかったら、きっと今頃あの場で泣き崩れてしまっていただろう。

 視線を合わすことができずに少しだけ下を向いたまま、口にする。

 ……不愛想だ、って思われるかな。

 視線一つも合わせずにお礼なんて、気分を悪くさせたかもしれない。

 だけどそんな私の心配は杞憂に終わり、さっきと変わらない優しい言葉が届いた。

「ううん、大丈夫だよ。湖宮さんはやっぱり、誰にでも優しいね。」

 やさ、しい……? 私が……?

「わ、私なんて優しくないよ。むしろダメダメだと思う。氷堂君にも迷惑、かけちゃったし……」

「そんな事言わないで、湖宮さん。」

「う、でも……。」

 反射的に顔を上げて、氷堂君と視線がぶつかる。

 その瞳はやっぱり優しくて包容力が見えて、自然と気が緩んでしまう。

 けど私はそこまで気は回らなくて、つい弱音を吐き零してしまった。

「……私は全然、ダメな人間なの。取り柄もないし、氷堂君が思うような優しさなんて持ち合わせていないと思うし……私はさっきみたいに、罰ゲームの餌になっちゃったりするし。」