腕を引かれたまま連れていかれたのは、氷堂君の教室。

 氷堂君は私を一つの椅子に座らせてくれ、目の前に自分も座る。

 ……正直、聞きたい事はいっぱいある。

 ありすぎて、どれから聞いていけばいいか分からないくらいに。

 どうしてあの場に居たの? 私を助けてくれたの?

 ……どうしてあんなにも、阿辺君たちに冷たい視線を向けていたの?

 だけどどれも、口には出せなかった。

 喉に何かが引っかかっているように、声が思うように出せない。

 そんな私に氷堂君は、さっきとは違う優しい声色で言葉を紡ぎ始めた。

「湖宮さん、ここには俺以外誰も居ないから。安心していいよ。」

 訴えるような切実な声にも聞こえるその言葉は、ズキッと心臓に突き刺さった。

 安心……できないよ。

 もちろん氷堂君が助けてくれたのは紛れもない事実だし、その件はとってもありがたいと思っている。

 けど……今度は氷堂君に対して、申し訳なさが生まれてきた。

 疑問はたくさんあるけど、まずはそれだ。

 私なんかに構わせてしまって、すごく申し訳ない。