授業に集中できるかどうかが、心配なところ。

 だって、今でもまだドキドキが収まっていないから。

『湖宮さんっ……!』

 ……うー、ダメだ。頭がパンクしちゃいそうだ。

 同じような事ばかり考えるのはダメだと悟って、私は小さく自分の頬を叩いて喝を入れた。



 氷堂君との事故が起きて、数日経ったある日。

 小説や漫画、アニメなどにある展開……氷堂君と接近するようなドキドキイベントもなく、今日も今日とて私は平凡に学校生活を送っていた。

 でも、何もないほうがいいよね。何かに巻き込まれたら、それこそ怖いもん。

 私は特別な人生を歩みたいわけじゃないから、地味に大人しく過ごすのが無難なんだ。

 こっちのほうが、私の身の丈に合っていると思うし……。

 だけどそう思っていた矢先、私はお昼休みにクラスの男の子に呼ばれた。

「湖宮、ちょっと来てくれないか。」

「え? 私……?」

 彼の名前は阿辺(あべ)君。氷堂君とはまた違った系統のイケメンさんで、女子人気は凄まじい。

 男子からも人気があり、学年きってのムードメーカー……だったはず。