けど紗代ちゃんは何故だか、口角を上げている。

 私の気のせい……?と一瞬は思ったけど、そうではなかったようで。

「まさか氷堂と急接近かぁ~。わぁ~、あたしにとってそれは最高なんだわ。メシウマもんなんですわ。」

「お昼休みまでまだ時間あるよ?」

 メシウマ……って、お弁当の事を指してるのかな?

 そんな考えに至った私だったけど、紗代ちゃんの考えとは違ったみたい。

「まさかここまで結衣が無知だとは……くっ、純粋鈍感っ子を完全に舐めていた。」

「さ、紗代ちゃーん……?」

 一人で何を言ってるの……? ちょっと怖いよ……?

 紗代ちゃんにつられて、私も小声で名前を呼んでみる。

 するとその数秒後に、満面の笑みを浮かべた紗代ちゃんが私の肩を掴んだ。

「まぁどっちにしろ何もなくて良かったわぁ~。」

「ちょっとまっ……あんまり、揺らさないで紗代ちゃん……っ!」

 酔っちゃうよっ……!

 肩を掴まれたまま強い力で揺さぶられ、目がぐるぐるしてくる。

 それでも余っていた力で頑張って訴えると、分かってくれたみたいですぐにやめてくれた。