「ううん、何でもないよっ!」

「……なーんか嘘っぽいな~。ほんとは何かあるんでしょ。」

「うぇ? な、何もない、よ……あはは。」

「何かある奴は大抵そう言うの。しかも結衣、めっちゃテンパってるじゃん。」

 紗代ちゃん、鋭い……。

 言葉だけで分かるなんて、探偵さんになれるよ。

 そう言おうと口を開きかけたけど、その前に紗代ちゃんの言葉が飛んでくる。

「何があったか教えてもらおうかな~? どうせ帰ってくるのちょっと遅くなったの、それが原因でしょ。」

「お、遅いって気付いてたんだね……。」

「そりゃあね。結衣があまりにも挙動不審だったから、少しだけ泳がせてたの。」

 策士だ、紗代ちゃん……。何か別の事に使ったほうが良い気がするよ……。

 察しの良い紗代ちゃんが何も聞いてこないのは私もおかしいと思ってたから、これで何となく腑に落ちた。

 それでも少しだけ、騙された感はあるけど……。

「紗代ちゃん、言わなきゃダメ?」

「ダメ。もちろん、一から十まで言ってもらうからね!」