「まぁ分かってたから別にいいけど。どーせ、俺なんかクズ野郎だよ。」

 く、クズって……そ、そこまでは思ってないけど……。

 あっけらかんとした表情で淡々という阿辺君に、苦笑いが零れる。

 ……だけどまさか、このタイミングで自覚をするとは。

 薄々は気付いていた。でも、気付かないふりをしていた。

 気付いてしまえば、この先に行くのが怖かったから。

 私が告白してしまう事で、秦斗君との関係がこじれる事だけは避けたかったから。

 けど両思いだと分かった今、それに怯える必要はない。

 ……かといって、告白する勇気はない。

 まだ心の準備もできていないのに、告白はハードルが高すぎる。

 そしてそれに追い打ちをかけるように、教室の出入り口近くから大きな叫びともとれる声が私の元に届いた。

「ゆーいーっ!!! 大丈夫!? というか何でこんなとこに……って、もしかして阿辺になんかされた!? 怪我とかしてない!?」

「わっ……紗代ちゃんっ。」

「あたし、めっちゃ心配したんだからーっ! 教室帰ったら結衣居ないし、片っ端から人に聞いてったらこっちのほう行ったって言われたし……マジで大丈夫なの!?」