「……っ、変な奴だな。そういうところは責めるとこだろ。」

「えっ? 責める?」

「そうだ。泣くくらい湖宮は俺に傷つけられたのに、礼を言うなんてどうかしてる。」

 それだけを言って、阿辺君は教室から出ようと私に背中を向けた。

 ……悲しくなかった、ていうと嘘になる。

 騙されたんだとも思ったし、やっぱり私なんかじゃ……とも改めて分かった。

 だからこそ、阿辺君に言わないといけない事があるんだ。

 私は急いで、阿辺君を引き留めた。

「それでも……だよ。嘘でもそう言ってくれて、嬉しかったんだ。だから……ありがとう。」

 もう一度、阿辺君の瞳を見据えてお礼を言う。

 すると阿辺君は、呆れたような大きなため息を吐き出した。

 また、アホとか言われるのかなぁ……。

 そう思い少し身構え、手をぎゅっと拳の形にする。

「――悪かったな。」

 ……え?

 だけど、私の耳にはそんな謝罪の言葉が。

 意味がいまいち分からずきょとんと突っ立っていると、阿辺君は今度はより分かりやすい説明をしてくれた。