極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 包み込むように抱きしめられていて、そう簡単には身動きができない。

 きっと氷堂君は私がさっきこけそうになったから、助けてくれたんだ……。

 でもまさか、こんな体制になるなんて思ってなかった。

 それに……ち、近い。

 氷堂君の綺麗な顔が近くて、否応なしに顔が真っ赤になる。

 何だかいたたまれなくなって、私は急いで氷堂君に訴えた。

「あ、あの、そろそろ離してもらえると、助かり、ます……。」

「……あっ、ごめんね湖宮さんっ。とっさに抱きしめちゃってっ。」

 私がそう言うと、氷堂君は何故か私以上に慌てて回していた腕を解いてくれた。

 その後氷堂君と距離を取ったけど、ドキドキは止まらなくて。

 私の体温はずっと、上がりまくっていた。

「さ、さっきはありが、とうっ……。おかげでたすか……氷堂君?」

「ん? どうしたの、湖宮さん。」

「足、怪我してるっ……!」

 お礼を言おうと頭を下げた時、私は氷堂君の異変に気付いた。

 足、血が滲んでる……!

 本人はいたって普通にしているようだけど、少しだけ顔を歪めているのを私は見逃さなかった。